泡沫候補の躍進が写すアメリカの分断

21 2月

 本来は、早々に撤退を余儀なくされるはずの泡沫候補が、本命を脅かす状況。
 二大政党に吸収できない民意が拡大し、無視できないところまで来ている。

 アメリカ大統領選挙の予備選は、3月1日のスーパーチューズデイまでで30%の代議員が決まる。
 そのうち序盤の2戦で2位以内に入っていないと勢いがつかず、資金も集まらなくなり撤退することは多い。
 党にとっての本命の中道本流の候補は2位以内に入ることは当然として、選挙を盛り上げるためにも、極端に主張のかたよる泡沫候補が善戦することが望まれる。
 泡沫候補が予備選を勝ち抜き本選挙にいっても相手の党の中道の候補に惨敗した経験から、スーパーチューズデイ以降は中道派が勝ち抜けるように予備選の選挙制度も工夫されているし、投票者もそこを考慮している。
 
 民主党は、ヒラリー・クリントンが予備選を勝ち抜くことが既定路線で、「対抗馬のサンダース上院議員にはある程度善戦してもらわないと、ヒラリー氏が独走して予備選が盛り上がらないから困る」というのが、民主党幹部の当初の考えだっただろう。
 サンダース上院議員は、民主党よりもさらに左の候補で、アイオワとニューハンプシャーでは善戦しても、マイノリティーや(サンダース上院議員と比較して)保守層から支持されているヒラリー氏には、ネバダ以降は全く勝てないと思われていた。
 しかし、ネバダ以降もサンダース上院議員に勢いはあり、このままでは最終的にはヒラリー氏が勝っても、苦戦して以外と人気が無いと明らかになること、サンダース上院議員の主張を取り込まざるえず左過ぎると批判されることから、本選挙で苦戦する要因になる可能性がある。

 共和党は、民主党以上に苦しい。
 党派を超えたポピュリストのトランプ氏が支持トップで、ニューハンプシャーに続き、南部のサウスカロライナでも勝利した。
 トランプ氏と、ティーパーティから支持される宗教保守で右派のテッドクルーズ上院議員という中道から人気の無いポピュリストが先行し、共和党主流候補の一本化ができていない。
 ブッシュ氏やルビオ上院議員などの共和党主流候補の一本化ができればよかったが、ブッシュ氏はサウスカロライナで負けて撤退を表明。
 ルビオ氏は、最初の2州で2位に入れず(かろうじて3位)、テレビ討論では精彩を欠き、共和党本流の一本化の決め手になっていない。
 南部は経済や人口の面で最も重要な選挙区であり、トランプ氏はその南部の初戦で勝利したことから、今までは泡沫候補で終わると思っていたけれどこのまま共和党候補になる可能性が出てきた。
 しかし、仮に共和党候補になったとしても、本選挙で勝てる可能性があるかというと、全く未知数だ。
 トランプ氏にとって有利な点は、既存の党派政治に批判的な層の受け皿になっていること、(ある意味共和党にとっての最大の戦犯である)サラ・ペイリン元アラスカ州知事から支持を受けたことによって共和党の価値観である保守主義の土台に乗っていると示せたことだ。
 対して不利な点は、極端なポピュリストであり共和党本流の支持をどれだけ受けられるか不明であること、主な支持層である白人低所得者層が本選挙でも投票に行くかわからないこと、ローマ法王から「壁を造るのはキリスト教徒ではない」と批判されたことだ。
 特にローマ法王から批判されたことは、サウスカロライナでは対立候補がそれを利用しなかったために影響は軽微に抑えられて勝利したが、今後大きく響いてくる。
 ローマ法王は西欧諸国にとっての倫理・道徳の基軸であり、アメリカの宗教保守層にとっても無視できない存在で、ローマ法王から批判される人物に支持することへの抵抗は、時間を置くほど重みを増す。

 

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