オバマ大統領の遺産

30 12月

 次期大統領へ引き継がれるオバマ大統領の遺産は、イラクからの撤退、全政権の腐敗の開示(CIAの拷問など)、キューバとの国交回復、マイノリティーのガラスの天井を壊したことだろう。

 

 イラクからの撤退はイスラム原理主義者の勃興を促したとして批判されているが、世界の警察を降りて自国の利益を再優先することは、正当ともいえる。

 イラク駐留を延期すれば、イラク国民など中東地域にとっては益をもたらすが、アメリカへの(ある意味不当な)批判や軍事費の増大など、アメリカにとって利益はまったくなかった。

 撤退しようが駐留を延期しようがどちらを選択しても批判されるという前政権の遺産にたいして、自国の利益を優先して撤退したことは、アメリカ国民にとっては正しい選択だったといえる。

 (ISの勃興を促したのは、スンニ派を冷遇し、フセイン政権の官僚を離反させたことは、きっかけはアメリカにあろうとも、イラク政権に大きな問題があったと考える。)

 ISが勢力を拡大しても反射的に軍を上陸させずに様子見を維持していることは、迫害や略奪暴行をうけている民族・宗教にとては悲劇であるが、アメリカがこの泥沼に入らないための冷徹で合理的な判断だ。

 

 前政権がテロとの戦いというお題目によって正当化してきた非文明的な非合法活動は、アメリカの権威と正義を失墜させるには十分なものだった。

 過去のブッシュ家の大統領が行った戦争の大義はどれも嘘であることが後に明らかになっており、諜報機関の拷問や捏造により戦争を吹かっけていたという事実だけ見れば、アメリカをならず者国家と呼んでも差し障りはないだろう。

 そうした事実を隠ぺいするのではなく開示したことは、一時的にはアメリカへの批判となるが、自浄能力があることを主張することができ、権威や正義の回復の第一歩となった。

 スノーデン氏が盗聴を暴露する前にオバマ大統領が開示すればいうことはなかったが、オバマ大統領は人物に依存する諜報活動へ信頼をしていないことから、盗聴などインフラを利用した諜報活動に重きをおいていたから、自ら開示はしなかったかもしれないが。

 

 キューバは、チェ・ゲバラとカストロによって新米政権が打倒され共産主義になり、アメリカ(国民)の財産が没収され、その後、アメリカが軍隊を派遣したことや核の持ち込み問題(キューバ危機)などで、アメリカとは100数十キロの距離にありながら近くて遠い国であった。

 他の国から見ると今更特に争う必要のない国でありながら、現在も国交が断絶したまま。

 キューバとしては、友好国であるベネズエラが原油価格の下落などで支援を受けることが難しくなり、主力産業の観光産業も旧(現?)共産国の観光客だけでは芳しい状況にはならなかった。

 そうした状況の中、アメリカの観光客を呼び込み経済を活性化し、かつ直接輸入によって物価を下げたいキューバの思惑と、遺産を作りたいというオバマ大統領の思惑の一致を、フランシスコ法王が根回しすることによって国交の回復ということが実現しようとしている。

 (キューバはカトリック信者が多い国です。)

 

 黒人への差別として暴動が起こり、アメリカの人種差別は現在も無くなっていない。

 しかし、差別される側の有色人種が国家の最高権力者に上り詰めたという事実は残り、 努力をしても絶対に上へ登れないのではないという証明がされた。

 アメリカ経済は盤石で2015年以降も当分の間揺るがないが、それは、だれでも上へ登れるかもしれないという可能性が土台となっている。

 可能性があることを証明したことは、何よりも素晴らしい遺産であると、私は思う。

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