年休権と時季変更権

16 4月

労働法39条5項但し書き

「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては他の時季にこれを与えることができる」

 

 年休権は、法律上当然生ずる労働者の権利であって、労働者が年休を享受することを妨げてはならないという不作為を基本的内容とする使用者の義務であり、使用者が時季変更権を行使しないかぎり時季指定によって年休が成立し当該労働日における就労義務が消滅することをいう。

 つまり労働者は、原則として、いつでも有給を申請して休む権利(形成権)を持っている。

 ただし例外として、「事業の正常な運営を妨げる場合」には使用者は時季変更権を行使することによって時季をずらすことができるということである。

 

 ここで使用者の時季変更権を安易に認めてしまえば、労働者に有給休暇をとらせないことを可能としてしまうので、その要件は限定されて解されるべきである。

 「事業の正常な運営を妨げる場合」にあたるためには、当該労働者の年休指定日の労働がその者の担当業務を含む相当単位の業務の運営にとって不可欠であり、かつ、代替要因を確保するのが困難である必要がある。

 判例では、使用者が代替要員確保の努力をしないまま直ちに時季変更権を行使することは許されないとしており、恒常的に人員不足のため代替要因の確保が難しい状況であっても、時季変更権の行使は認められないと解されている。

 

 たとえば、ある部署のキーマンが休んでしまうと業務が滞るという理由は、ここでいう「事業の正常な運営を妨げる場合」にはあたらず、時季変更権は認められないと考えられる。

 では、ある学校の教職員が、勤務地の学校の入学式と自らの子息の入学式が同日であり、有給を申請して子息の入学式に父兄として出席する場合はどうであろうか。

 まず、教職員の所属する使用者が時季変更権を行使しないのであれば、何の咎も受ける必要はなく、有給により子息の入学式に出席できる。

 これは労働者としての当然の権利である。

 では、使用者が時季変更権を行使した場合はいかがであろうか。

 私は、入学式と卒業式の日に限り、この時季変更権は認められると考える。

 学校は教育というサービスを提供するが、その中でも入学式と卒業式は、教師と生徒という属人的なつながりの起点と終点という代替不可能な日であるため、「事業の正常な運営を妨げる場合」にあたると考えるからである。

 (その他の行事についても教職員という職業倫理上すべて出席すべきという意見もあるかもしれないが、そうなると1日たりとも休むことは出来ないという結論に達してしまうことから、労働者の権利を保障するためにも、時季変更権を否認すべきと考える。)

このエントリーを Google ブックマーク に追加
LinkedIn にシェア
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です