クリミア情勢

22 3月

 2014年3月18日、クリミア自治共和国と特別市について、ロシア連邦に編入する方針を、ロシアのプーチン大統領が表明した。

 これに対してEUは強く反発しており、旧冷戦の対立が再燃しようとしているかのようだ。

 では、今後対立が激化し武力衝突するかというと、そのような自体は起きないと考える。(アメリカ・ロシアのどちらかが軍隊を派遣した国には、軍隊を派遣しないという暗黙の了解は現在も機能しているようだ。)

 そう考える理由は、ロシア・EU双方ともクリミアを廻って対立を継続するような余裕は無く、争って勝ったとしても得るものはほとんど無いからだ。

 

 クリミア情勢の主要な関係者は、アメリカ(+日本)ではない。

 地理的にウクライナと離れていることと、ロシアの天然ガスに依存していないこと、経済的な取引高が低く経済的な影響が間接・限定的であることからだ。

 もちろん西側諸国の一員として、政治的歩調を合わせるコトは求められるが、主導する立ち位置ではない。

 主要関係者は、地政学的問題、エネルギー問題、経済問題に不可分な国であり、それがロシアとEUということになる。

 

 ロシアは歴史的に、凍らない海を求めて南下する政策を堅持しているが、クリミア半島は黒海に突き出た地域であるので、ロシアとしては重要な地域であり、港を軍港としてウクライナから借り受けていた。

 親ロシアが多いとはいわれていても、歴史的にはタタール人が根付いている地域であり、一概に親ロシアと割り切れない。

 正当性という点でも疑問が残る。

 ウクライナが核兵器を放棄する見返りにウクライナの領土を保全を認めるブタペスト覚書に違反し、クリミアの選挙もロシアの支配下にある結論ありきの公正さを欠くものだからだ。

 ロシアにしてみると安全保障の点で重要性の高い地域ではあったとしても、必ずしも編入をしなければならないほどの地域とはいえない。

 それでもロシアが強行にクリミアへの介入を急ぐのかといえば、ロシアの復活を掲げることによって、腐敗を隠蔽し政権を維持しているプーチン自身の影響力の低下がある。

 ここでEUに対して譲歩したり時間を長引かせてしまえば、政権に甚大な影響を及ぼすことが予想されることから、(ロシアにとってというよりは)プーチン氏にとって選択肢が無かったともいえる。

 ロシア側の立場では、現在のウクライナの暫定政権は、選挙で選ばれた人物を追放することによって居座っているのであって、正当性があるとはいえず、政権内には極右勢力も入っていることから政権としての危険性がある。

 選挙で選ばれた人物を保護し、かつロシアと人々を保護するためにも加入が必要だったという主張は成り立つ。

 

 ロシアはエネルギーを、他国への影響力として用い、特に自国勢力圏を維持するためにとって必須なものであり、ウクライナ等の旧ソ連諸国に対しては格安の価格で卸している。

 しかし、アメリカのシェールガス革命によって、アメリカは中東に依存していたエネルギーを自国でまかなえるようになり、輸出先を失ったエネルギーが欧州などに安く輸出されるようになった。

 そのあおりをうけてロシアの天然ガスへの依存度が低下し、天然ガスなどの輸出によって経済を支えるロシアにとって、好ましくない状況となっている。

 エネルギーに占めるロシアの天然ガスの割合は、EUの屋台骨であるドイツがもっとも大きく、仮にロシアからの天然ガスの供給が停止された場合、短期においては経済や生活に強い影響を与えるだろう。

 しかしそれはあくまでも短期であって、中・長期的にはロシア以外にエネルギーの輸入先を変更することになることから、アメリカのエネルギー革命は、ロシアの先進国に対する影響力を確実に弱めている。

 ただ、それはEUなどの旧西側諸国に限った話で、旧ソ連諸国に対する影響力は変わらない。

 たとえばウクライナがどれだけEU側に接近しようとしても、ロシアからのガス価格が通常のEU価格へ変更されてしまえば、値を上げるのはウクライナだからだ。

 

 冷戦時代には、ロシアは鎖国状態(輸出先は共産圏が少し)であり、外国からの影響はほとんど受けなかったが、現在では、外国資本の受け入れや天然ガス等の輸出によって外貨を得ることによって経済を復調させてきた。

 天然ガスの主要な市場である欧米との取引が停止されれば、ロシア経済は深刻な影響を受ける。

 経済の影響は国民が直接負担することになり、ソビエト連邦崩壊以降安定を求める傾向が強いロシア国民といえども、プーチン氏への支持率はある程度下がるだろう。

 プーチン政権を支えている(寄生している?)ロシア経済の資産家達は、自らの資産を所有権の保護を保証している西側に移しており、制裁によって資産を凍結されてしまえば大損害を被ることになる。

 ロシアとしては、EUと争い互いに制裁をしたとしても、全く良いことは無い。

 良いことが無いのはEU側も同様で、安価なエネルギーの入手ができなくなることや地政学的なリスクが高まることは、かろうじてEUという枠組みを維持し国家経済を運営している状況において、強いリスクとなってしまう。

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