需要サイドではなく、供給サイドの改善こそ、不況脱出の本手。

17 9月

 世界不況からの脱出には、一人当たり生産性の改善が何より必要。

 

 日本では「失われた20年」という言葉で、中流階級の没落と、若年層の貧困が問題になっている。

 これは、日本に限定された状況ではなく、世界中で同様のことが起こっている。

 この状況を改善するために、政府支出の増大や金融当局の積極的な介入求める強い声と、財政の健全化による不確実性を減らすための政府支出の削減と増税を求める弱い声がある。

 どちらが正しいのかは定かではないが、私はこうした需要サイドの論議ではなく、供給サイドに注目するべきだと考える。

  

 国家としての豊かさを示すものはGDPであるが、国民一人あたりの豊かさを示すものは一人当たりGDPだ。

 一人当たりGDP成長率を見たときに、必要なことはなんであろうか。

 要素として、貯蓄率の上昇、人口成長率の低下、技術進歩率の上昇がある。

 貯蓄率の上昇は、国民の貯蓄率を向上させるだけではなく、外国からの投資を呼び込むことによっても達成される。

 外国資本の呼び込みは、国家のためでもあるし、国民のためでもある。

 外国資本が日本企業を買いあさるという批判があるが、株式の価値を高ければ投資を受けたとしても買収されることは非常に困難になる。

 株式の価値を高めないために株価が低迷し、買収されるのだから、批判されるべきは、海外の投資家・企業ではなく、日本の経営者と政治家だ。 

 国際会計基準への積極的参加による主導権の確保と、証券市場の運営の改善、そして、積極的な企業開示が必要だ。

 日本の貯蓄率の高さに胡坐をかいて何もしないのは、愚策である。

  

 人口成長率の低下、技術進歩率の向上であるが、私は人口成長率は一定以上確保しなければならないと考える。

 なぜなら、人口の減少は、技術進歩率に強い影響を与えるからだ。

 20年間の日本を除く世界経済の活況は、パソコンとインターネットによる技術革新による生産性の向上がもたらしたものだ。

 これらの技術は、各国の経済成長率を高く支えていた。

 しかし、パソコンもインターネットも世界中に広がり、この新技術による特別な生産性の向上は望めなくなった。

 (ただ、スマートフォンの登場によって、生産性の向上が期待できるとは思うが。)

 技術進歩率との関連で、大型科学施設の建設が経済に役に立つかという問いに対して、私は必要であると考える。

 パソコンもインターネットも、経済にどれだけ役に立つかという点から生まれたものではなく、ただ、科学者の好奇心と探究心を満たす副産物として結果として生じたものだ。

 どれだけ将来の経済に役に立つかはだれも予測できず、そうした役に立たない壮大な実験がなければ、こうしたBlogも何もできなかった。

 科学技術を進歩させるための土台である人口と、そして、目先の成果に結び付けられない科学研究は、今以上に維持されなければならない。

 

 貯蓄率の向上や技術進歩率の向上は必要であるが、他にもできることはある。

 それは労働環境の変革だ。

 通信環境やスマートフォンなどのモバイル設備に充実によって、会社にいなくても同等の作業ができるようになっている。

 たとえば、ipadとデータカードを用いれば、リモートで会社のパソコンを操作することができるなどだ。

 (これで、勤怠管理やメールの送受信も会社にいなくてもできる。)

 しかし、ツールがどれだけ揃おうとも、結局は日本の硬直した労働環境と、それに基づく人事制度が対応していないため、生産性の向上ができていない。

 これは、労働法制の柔軟化も必要であるが、企業が自己努力によって達成しなければならないもので、誰かの責任に転嫁できるものではない。

 また、若年層や女性労働者などの活用ができていないことも深刻だ。

 ワークライフバランスなど、労働環境についての様々な言葉が生まれてきているが、その本質は一つだ。

 その企業で生涯にわたって働くことが認められるのかということだ。

 つまり、出産・育児・介護など、性別に関係なく発生するイベントを、そのイベントが生じたとしても働けるようになっていなければ、勤労を続けることはできない。

  「語学が堪能で世界中どこにでも行き、だれとでもしぶとい交渉ができ、企業に絶対的な忠誠を誓い、しかも安く雇用できる労働者」を求める前に、やるべきことはある。

  生産性の向上のために、労働環境・人事評価という自らの痛みを伴う変革を、特に、伝統ある企業に求められている。

 「生産性を高め利益を上げる=企業価値を高める」努力を放棄し、世界経済や政治の責任に転嫁することは許されない。

 

【参考文献】 

岩田規久男、「ゼミナール経済政策入門」、日本経済新聞社

(あくまでも私の浅学浅慮の参考にしただけであって、私の主張を正当化する根拠になっているわけではありません。)

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