エジプトとシリアの状況

26 6月

・エジプト

 

 ムスリム同胞団のムルシ氏が選挙の結果、大統領に就任することとなった。

 しかし、今後ムルシ氏は非常な苦境に立たされることは間違いなく、過激なイスラム教国家にしないためにも、国際的な支援が必要だ。

 

 苦境に立たされる一つ目の問題は、既存勢力との権力闘争だ。

 既存勢力は軍部のみではなく、司法など官僚組織全般と経済界である。

 軍部は自らの優越を既定した憲法を作成し施行したため、大統領の権限が制限されている。

 軍事力を有し何時でもクーデターが可能であるという強みを軍部は持っているために、強硬に憲法をはねつけることができない。

 選挙においても、軍部にとって都合の悪い候補者を、候補者として不適格として裁判所が立候補を受託しなかったりしていることから、軍部と裁判所は密接なかかわりがある。

 裁判所だけでなく、現在のエジプトの官僚組織すべてはムバラク前大統領が任命した既存の抵抗勢力そのものであり、行政機関全般が民衆に選ばれた大統領にとって解決すべき課題である。

 行政機関のみでなく、エジプトの経済界も前大統領との関係で財をなしてきたのだから、自らの権益を守るために積極的な協力は期待することが難しい。

 多くの国民を失いながら政権を打倒したエジプトにあって、前大統領派のアハメド・シャフィク氏が多くの得票を得たのは、こうした既存勢力が一致団結して支援したからだ。

 唯一の救いは、ムルシ氏が選挙に勝ったとしたことだろう。

 選挙結果を捻じ曲げることが既存勢力にとって常套手段であり当然の選択肢に入っていたと思うが、民衆の既存勢力への強い忌避感とアメリカの助言によって選挙結果を受け入れざるを得なかった。

 つまり、既存勢力を打倒したのも、既存勢力に対抗して民主主義を守り続けるのも民衆の関与以外にない。

 

 二つ目の問題は、経済の低迷だ。

 騒動によってエジプトの観光産業は壊滅的な被害を受けている。

 それも今回の大統領選挙の結果を踏まえて改善していくだろうが、民衆が期待するような経済成長は難しい。

 世界経済が好調であったのならば外資の呼び込みを期待できたかもしれないが、世界中の資金がリスクマネーを忌避していることから、地政学的・政治的リスクのあるエジプトはなかなかに厳しい状況だからだ。

 エジプトの革命はネットを活用した知識層が発端となったが、生活に困窮する民衆が中心的な原動力になってきたことを考えると、新大統領が就任しても生活苦から抜け出せないとして一気に支持を失う恐れがある。

 

 三つ目の問題は、外交問題、つまりイスラエルとの関係だ。

 親米・親イスラエルのムバラク大統領失脚後、エジプトとイスラエルの国境線では緊張感をます事件が起きている。

 イスラエルは、ガザ地区への武器流入の取り締まりをエジプトに求め、時に手ぬるいと非難しているが、今後積極的な取り締まりは期待できなくなった。

 エジプトは、経済的な不満をそらすために、高圧的な対イスラエル政策をとる可能性が非常に高い。

 中東の中心的国家であるエジプトの対イスラエル政策が高圧的になったとすると、中東戦争が再発することもありえる。

 民主化を求めて血を流した結果が、平和な社会ではなく他国との戦争という結末では、あまりにも救いがない。

 

 

・シリア

 

 シリアのアサド大統領は、中国・ロシアを除いた国際世論の圧力に屈することなく、国民を弾圧し虐殺し続けている。

 独裁者が国民を全力で弾圧することが、権力維持の唯一の手段だと証明されようとしている。

 シリア軍からの離反が拡大し政権打倒は早いのではと考えたが、それはあまりにも楽観的だった。

 政権が維持されている理由は、徹底的な弾圧が大きな理由だが、その他にも反政府勢力が権力闘争を繰り広げてまとまりを欠いていることがある。

 政権打倒後の利益拡大を図るための綱引きで忙しく、シリア国民が虐殺されている事実に対応していないのだから、アサド大統領にとってはありがたいことだろう。

 それでも、シリア空軍のMIG21がヨルダン政府に戦闘機ごと亡命したことなど、政権を震撼させる出来事もあったが、国際世論を高め、中国・ロシアによるシリア政府援助を絶つことがまず必要だ。

(アサド大統領の父親は空軍であった。そのため空軍は、アラウィ派・バース党の影響が一番強い部隊)

 中国・ロシアの支援が続くうちは、虐殺もまた続く。

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One Reply to “エジプトとシリアの状況”

  1. まとめtyaiました【エジプトとシリアの状況】

    ・エジプト  ムスリム同胞団のムルシ氏が選挙の結果、大統領に就任することとなった。 しかし、今後ムルシ氏は非常な苦境に立たされることは間違いなく、過激なイスラム教国家に…

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