経営判断原則とOlympus

4 11月

 経営判断原則(Business Judgment Rule)とは、取締役の経営判断が会社に損害をもたらす結果を生じたとしても、当該判断がその誠実性・合理性をある程度確保する一定の要件の下に行われた場合には、裁判所が判断の当否につき事後的に介入し注意義務として取締役の責任を直ちに問うべきではないという考え方。

 

1:取締役は、善管注意義務に反しているといえ、株主に対して責任を負う。

2:監査法人は、重大な過失があり、株主に対して責任を負う。

 

 突然解任されたオリンパスのマイケル・ウッドフォード前社長兼最高経営責任者(CEO)は、過去に行われた巨額買収の件を追及したために会社を追われたと主張している。

 (オリンパス側は、ウッドフォード氏の独断専行が会社に損害を及ぼすと主張している。)

 医療用廃棄物処理会社「アルティス」と、調理容器メーカーの「ニューズシェフ」は、設立後、長年にわたり事業活動を一切行っていなかった。

 もう一つの会社は化粧品・健康食品販売の「ヒューマラボ」で、オリンパスが出資する1年足らず前に、同様に異なる社名で設立された。

 オリンパスは最終的に3社を約700億円で買収した。

 (その3社は設立後利益を計上していなかった。)

 さらに08年の英医療機器会社ジャイラス・グループは、買収前と比較して58%高い2117億円で買収した。

 そして、買収価格の36.1%にあたる6億8700万ドルの報酬を、リンパスがアグザム及びアクシーズに支払っている。

 

1:取締役は、善管注意義務に反しているといえ、株主に対して責任を負う。

 経営には成功と失敗があり、また、短期長期で判断も異なる。

 そして、失敗した場合にすべて巨額の責任を取らされたのでは経営者はだれもなることはできない。

 だからこそ、経営者に誠実性と合理性が有る場合には責任を負わせないという経営判断原則が必要である。

 では、オリンパスの場合はどうであろうか。

 私は、買収案件と買収額、そして投資会社へのアドバイザリー料に誠実性と合理性をある程度備えているとはいえず、株主に対して責任を負う必要があると考える。

 

 買収案件がすべて公開され、そして適正であることは無い。

 資本の集合である会社であるけれど人の集合である組織を買収するから、そこには人的要因が様々に介入し、不確実で不明瞭な部分がある。

 しかし事後的に、その判断に至った理由、つまり誠実性と合理性を説明できなければならない。

 完璧な論理でなければならないということではなく、論理に多少の飛躍があろうとも、論理の過程を説明できなければならないということだ。

 オリンパスの一連の買収について、あまりに高すぎる買収価格とアドバイザリー料金であるのだから、それに相応するビジョンと実行するための戦略がなければならない。

 そのビジョンも何も説明することも無いのならば、論理性は何も無かったといわざる得ない。

 誠実性と合理性がない判断によって会社に損失を与えたのだから、取締役(及び監査役)は、株主に対して責任を負う。

 

2:監査法人は、重大な過失があり、株主に対して責任を負う。

 監査法人は、財務報告の信頼性のために監査報告書を作成することを目的にし、不正の発見はその第一の目的ではない。

 オリンパスの買収額が不当に高くても、会社内の手続が適正に踏まれており、かつ、その金額(減損額を含む)が適正に財務諸表に反映されているのなら責任はない、と考えて良いのであろうか。

 従業員や経営者の小額の横領などであれば見逃すことは致し方ないことであって、責任はないといえるだろう。

 しかし、あまりにも会社の存続を脅かすほど巨額で、不正の恐れのある取引を、手続を踏んでいるから問題が無いというのなら、株主は監査を必要とするのだろうか。

 手続と基準だけをチェックするのなら専門家は必要なく、時給1000円でアルバイトを雇って、チェックリストに記入させれば十分だ。

 専門家でなければならないと主張し、その報酬を受け取るのなら、専門家としての責任を負わなければならない。

 巨額の買収を、「買収の理由は無いけど手続を踏んでいるから良いよね」と経営者から説明されて引き下がるのなら、子どもの使いといわれてもしょうがないだろう。(実際はどうだか知りません。憶測です。)

 つまり、投資家の判断を左右する問題に対して何の危機感も持っていないことが、専門家としての重大な過失である。

 よって監査法人は、株主に対して責任を負うと考えられる。

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