雑所得と損益通算の可否(租税法判例百選47)

13 8月

概要

 Xは上場商品の売買を締結し昭和47年12月20日成行買いを依頼した。しかし依頼を受けた担当者が成り行き決済を失念し、昭和48年1月5日に成り行き決済を行った。

 Xは一連の売買で3496万9600円を昭和47年分の雑所得の金額の計算上生じた損失であるとして、他の雑所得から控除して確定申告を行った。

 

論点

1:商品売買に係る所得の帰属時期

2:商品売買は事業所得か雑所得か

3:雑所得損益通算の規定がないのは、財産権の保障(憲法29条)、職業選択の自由(憲法22条)に反するか

 

判例

1:商品売買に係る所得の帰属時期

 現実に委託に係る反対売買が成立して決済が行われない限りその損益は確定せず、同決済が完了して初めてこれが明らかになると解されるから、所得の確実性及び明確性という点からして、商品取引に係る所得の帰属年度はその委託による反対売買が成立して決済が行われた日の属する年の損益に帰属する

 昭和48年に帰属すると解するのが相当。

 

2:商品売買は事業所得か雑所得か

 所得税法27条1項の事業所得とは『対価を得て継続的に行う事業から生ずる所得』を指称するところ、『事業』とは、『個人の危険と計算において独立的に継続して営まれ、かつ事業としての社会的客観性を有するもの』と解すべきである。

 Xの本件の商品売買は営利性、継続性を有することは認められるもののXの余剰資金の運用をSに殆ど一任していたものであり、恒常的な収益をそこから容易に期待し得ないばかりか事業としての社会的客観性に乏しいといわざるを得ない。

 事業として認めることはできない。

 

3:雑所得損益通算の規定がないのは、財産権の保障(憲法29条)、職業選択の自由(憲法22条)に反するか

 所得税法が立法政策として所得分類制を採用しているのは、所得がその性質により担税力を異にし、担税力に即した公平な課税を行うために所得をその性質ごとに分類したうえその担税力に適した計算方法と課税方法を定める必要があることに由来し、雑所得と他の所得の間には所得の発生する状況に差異があり、雑所得においては、多くは余剰資金の運用によって得られるところのものである。

 その担税力の差に着目すれば、雑所得に他の所得との損益通算の規定がないことにはそれ相当の合理性を認めることができるから、それをもって憲法29条、憲法22条に違反するとの見解は採用できない。

 

まとめ

 所得の確実性及び明確性という点からして、商品取引に係る所得の帰属年度はその委託による反対売買が成立して決済が行われた日の属する年の損益に帰属する。

 事業とは、個人の危険と計算において独立的に継続して営まれ、かつ事業としての社会的客観性を有するもの。恒常的な収益をそこから容易に期待し得ないばかりか事業としての社会的客観性に乏しいから事業とは認められない。

 担税力の差に着目すれば、雑所得に他の所得との損益通算の規定がないことにはそれ相当の合理性を認めることができるから、憲法29条、憲法22条に違反するとはいえない。

 

捕捉 

・雑所得の金額の計算上生じた損失が損益通算の対象から除外された理由

(昭和43年税制改正による)

 雑所得は種々の態様のものを含んでいるものの、必要経費が収入を上回ることのないものが大部分であって通算の実益がなく、またある程度支出を伴うものについても、その支出内容に家事関連費的な支出が多く、損益通算を存置する場合にはかえって本来の所得計算のあり方について混乱を招くおそれがある。

(国税庁・昭和43年改正税法のすべて〔1968〕26頁参照)

 

捕捉 2

・平成20年度の改正で、金融所得一体課税の実現に向けて、平成21年分以後の上場株式等の譲渡損失は、上場株式等の配当の金額を限度として当該配当所得の金額と損益通算が認められることになった。

 (租税特別措置法37条の12の2)

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