管理会計のポイント 予算とバランスト・スコア・カード - 2

13 2月

予算とバランスト・スコア・カード(BSC)

3-2 バランスト・スコア・カード誕生の背景

 バランスト・スコア・カード(以下BSC)は以下3つの要請による。

 BSCを理解することためには、「利益の増大は、必ずしも企業価値(株主価値)の増大になるとは限らない。」ということを理解する必要がある。経営者や管理者の業績を利益で測定することに対しては大きな異論の無いところである。それがもっとも客観的でわかり易い指標だからである。反面、利益という指標のみで経営者や管理者の業績を評価することは、経営者や管理者が自らの評価をあげるために短期利益に走り、中・長期的な投資が押えられる傾向があるという問題点がある。中・長期的利益を犠牲にして短期利益を増大させることは、企業価値が増大したといえない。よって、短期思考ではなく中長期的な企業価値向上のための思考、計画ではなく戦略がもとめられた。

 企業は投資家と経営者からのみなるのではなく、顧客や社会、政府など多様な利害関係者がおり、それらを無視し、利益の増大に走れば、結果として、利益を減ずるおそれがある。飲食店などにおいて、社員教育がなっていない店は繁盛しないが、社員教育などは財務諸表に計上されない。経費節減で社員教育を廃止すれば、長期的には店の衰退につながるだろう。このように、貨幣的に表せないもの(以下:非財務的業績指標)が利益増大の重要な要因であり、企業価値と非財的業績指標を正しく捉える方法が求められた。だからといって、利益という指標の重要性がなくなったわけではない。

 また伝統的な予算管理は設備など有益資産の管理が中心であり、知的資産の管理が不十分であるという問題点が指摘された。特許やブランドなど、知的資産が企業が収益を獲得する上での重要性が増している。そうした状況の中で、知的資産を管理する手段として、BSCが有効であると考えられている。

 以上の、戦略、多様な利害関係者、知的資産という3つをコントロールする手法として、BSCは誕生した。

 

 

3-3 BSCの特徴

・目的:企業価値の増大

・可視化:戦略、利害関係者、知的資産と企業価値の関係

・費用対効果:日本では、一部のエクセレントカンパニーのみが全面採用

 

 BSCは、キャプランとノートンが提唱した「戦略から導出される業績評価指標を統合するための新しいフレームワーク」である。公表された当初(1992年)は、伝統的な財務的業績評価指標を非財務業績指標で補完する事によって、組織の業績を測定することを目的とする業績測定システムとして捉えたれていた。その後、戦略の実行を促進し、その結果を測定・評価することを目的とする戦略マネジメントとして捉えられるようになった。

 戦略マネジメント・システムとしてのBSCは、次の4つの戦略マネジメント・プロセスを組織化する主要なフレームワークとして機能し、戦略策定局面を通じて論理的に明確化された「戦略」を具体化かつ統合化すると共に、それにもとづいて組織と戦略をコントロールしていくという戦略実行局面と戦略コントロール局面において大きな役割を果たす。

 1:「戦略」の明確化と理解しやすい言葉への置換

 2:戦略目標・業績評価指標の周知徹底とそれらの連結

 3:計画設定・目標値の設定・戦略実行計画の調整

 4:戦略フィードバックと学習の促進

 

3-4 BSCの基本構造

 BSCは基本的に、財務の視点、顧客の視点、組織内業務プロセスの視点、および学習と成長の視点という4つの視点を持ち、その視点の下にバランスよく設定される各種の戦略目標、業績評価指標、目標値および戦略実行計画によって構成される。

 ・財務の視点

財務的な成功するために、株主にどのような姿勢を示すべきか

 ・顧客の視点

ビジョンを実現するために、顧客にどのような姿勢を示すべきか

 ・組織内業務プロセスの視点

株主や顧客に満足してもらうために、どのような業務プロセスに優れていなければならない か

 ・学習と成長の視点

ビジョンを実現するために、いかに変革・改善のできる能力を保持するか

 

 最終的な成果は財務の視点における財務的業績評価指標で表され、最終的な成果をもたらす要因となるパフォーマンス・ドライバーは顧客、組織内業務プロセス、および学習と成長の各視点における非財務的業績評価指標で表される。

 また、BSCの4つの視点における業績評価指標間の因果関係を大局的に目にみえるように図示したものを戦略マップといい、そこでは、戦略を実現するための重要成功要因が矢印で結び付けられており、矢印の向きは各種重要成功要因間の因果関係を示す。

  

 通常、経営者の作成した戦略を、個々の従業員が自らの問題であると認識することは困難である。BSCを用いることによって、戦略を個々の従業員に周知徹底させることができる。戦略を全社的に合意を得ることができるため、戦略を実現するためのバランスのとれた価値創造活動を確保することができる。

 

 BSCの留意点

 ・ABBとBSCの相違

 ABBとBSCは、両方とも予算の問題点を克服することを出発点としている。ただその克服の方向が、ABBはより精緻な予算編成ために、BSCは戦略との親和性を高めるために向かっている点が異なる。

 ・費用

 日本において、一部のエクセレントカンパニーしか導入していない。なぜなら、(キャプランらの言う)正しいBSCの導入には非常に費用がかかるためだ。たとえばシャープがBSCを導入した際には、従業員20人に1人の指導員を配置する必要があり、BSC導入にはまず指導員の育成からはじめなければならなかった。20人に1人、指導員の育成という点からみても、いかに費用がかかるツールであるかがお分かりいただけると思う。

 非常に費用のかかるBSCであるが、正しくないBSCは多くの企業で導入されている。もともと非財務的業績評価指標は日本の企業では、人事評価において用いられており、それを工夫することは従来から行われていたためである。


注4: 責任会計

 責任会計とは、経営組織上の管理責任者と会計組織上の数値が結合したものであり、各階層の経営管理者の業績を明確に認識、測定することにより

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