管理会計のポイント ABC ABM ABB

5 2月

 ABC・ABM・ABB

1 ABC誕生の背景

 製品の原価構造の変化によりABCが求められるようになった。従来は製品の原価構造の半分以上は労務費が占めており、標準原価計算による例外管理により主に労務費が管理されていた。1970年代以降、製造工程の機械化が進み、製品の原価構造の中で労務費の占める割合が低下し、代わって製造間接費の割合が半分以上を占めるようになった。製造間接費は機械などの減価償却費、材料の棚卸減耗、工場事務員の給料などであり、製造間接費の製品への配賦を機械作業時間など操業度基準によりなされることにより、正確な製品原価であるかについて疑問がもたれるようになる(機械作業時間で工場事務員の給料を配賦することは合理的な配賦ではない)。製品多様化が顕著なために複雑性の増した現代の工場では、実際には手数とコストのかかる多品種少量生産品には少ない間接費しか配賦されず、逆に大量生産品には余分の間接費が配賦されるという欠点が表面化したため、これらの問題点を克服する方法が求められるようになった。

 

2 ABC

・目的 :正確な製品原価の計算(による製品のリストラ)

・可視化 :製造間接費と製品との関係性

・費用対効果 :煩雑でかつ恣意的で、日本では導入が進んでいない

 ABC(活動基準原価計算)とは、アクティビティという概念を用いてコストを原価計算対象に割り当てる1つの原価計算システムをいう(山田庫平)。

 ABC導入の利点は、製品ごとに適切な製造間接費の配賦ができるため、正確な製品原価計算を可能とすることである。正確な製品原価を経営管理者層が得ることにより、製造製品の選択(なにを生産し、どの製品の生産を中止するか)が可能になる。

 欠点は手間とコストがかかることである。製造間接費の発生ごとにアクティビティを設定し、製品へ配賦すればより正確な製品原価の算定をすることができる。しかし、製造間接費は様々な場所から発生する。金額的に重要でないものにまでアクティビティを設定するか否かは、設定のためのコストと勘案して決めなければならない。

 日本の場合には、製造間接費をそもそも発生させないように製品に直課していること。操業度以外の基準により配賦しており、ABC導入の利益はほとんどない。

 

3 ABM

・目的 :プロセスの変革を通して、スピード経営を達成すること

・可視化 :付加価値活動と非付加価値活動の識別

・費用対効果 :ABCと同様、煩雑で時間がかかる

 ABM(活動基準管理)とは、顧客によって受け取られる価値、およびこの価値を提供することによって達成される企業の利益を改善するための方法として、活動の管理に焦点をおく技法である。この技法には、原価作用因分析、活動分析、および業績測定(業績測定の結果の分析)が含まれる(CAM-1の定義)。

 ABCにより正確な製品原価を得ることができ、利益獲得に貢献しない製品のリストラ(製造中止)を可能としたが、それだけでは企業再生が困難であった。単純な製品の集中と選択ではなく、ビジネスプロセスを改善する必要があることが認識され、そのための手法として、ABCを用いてビジネスプロセスの改善を図る技術としてABMが開発された。

 ABMは、企業にとって有益な活動(注2)を付加価値活動、そして、有益でない活動(注3)を非付加価値活動に区分し、非付加価値活動を排除するようにプロセスを改善する。このことによって、製品原価の低減やスピーディーな経営を達成しようとすることを目的とする。

 たとえば、受注から生産、配送までのリードタイムの中で、どの活動にどれだけの時間がかかっているかを分析し、非付加価値活動を排除することにより、活動時間の短縮による労務費などの節約による製造原価の低減と、顧客は早く製品を入手できることから顧客満足度を高めることができる。

 日本においては、ABMに対する取り組みがABCに比べて積極的になされている。ABMの導入に取り組んだ企業は、本来の目的のみならず、管理部門が製造部門に対して注目するようになるなど、部門相互間の連携が強くなったという副次的な効果が強く強調されている。しかし、時間によって管理されるということが、日本の労働慣行として強く反発されることから、導入には困難がともなう。

4 ABB

・目的 :戦略にもとづいた適切な予算を組む

・可視化 :戦略と製品(事業)との関連性を明らかにする

・費用対効果 :予算編成と同様かそれ以上の費用がかかる

 予算編成は部門や事業部ごとに縦割りで、かつ経理・財務部門にのみ有用なものであること、ホワイトカラーの管理には有効でないこと、そして、管理者に誤った指示を与える恐れがあるなどの問題点がある。また、過去の情報によって予算編成がなされ、戦略との連関が弱いという問題も指摘されている。この問題を改善すべく、戦略と製品の視点から、活動ごとに予算を配賦するというABBが発案された。

 ABB(活動基準予算)とは、作業の負荷と資源の必要量の見積もりを支援するためにABCを用いたコスト予算管理(桜井通晴『管理会計第3版』)をいう。

 製品(事業)ごとに活動を設定し、戦略に沿い割り振ることにより、部門や事業部という縦割りに横串(ビジネスプロセス)の管理を可能にする。このことによって、経理・財務部門以外の能率を計ることができ、ホワイトカラーの管理に有効である。

 日本においても予算の問題点は強く指摘されている。しかし、ローリング予算や目標管理などにより問題点の緩和に努めていること。導入の費用(教育と煩雑さと時間)がかかることが問題となっており、従来の予算とその改善策か、BSCなどが導入されている。


注2: 有益な活動とは、企業内外の顧客に付加価値を生み出し、最終的に企業価値を増大させる活動をいう。

注3: 非付加価値活動は、時間、資源あるいは空間を消費するが、顧客ニーズを満たすことはほとんどなく、たとえ除去されたとしても、顧客にとっての価値や顧客満足度はそのままであるものと

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