取締役の第三者に対する責任(百選77)

15 7月

立法趣旨

 法は、株式会社が経済社会において重要な地位を占めていること、しかも株式会社の活動はその機関である取締役の職務執行に依存することを考慮して、第三者保護の立場から、取締役が直接第三者に対して損害賠償の責に任ずべきことを規定した。

 

学説・判例の論点

1:責任の性質が特別の法定責任か、不法行為責任(民法709条)か。

2:民法709条の不法行為責任との競合を認めるか。

3:責任の範囲は直接損害に限るか、間接損害に限るか、両方含むか。

4:悪意重過失は、取締役の任務懈怠について必要か、第三者への加害について必要か。

 

特別法定責任説(判例・多数説)

1:会社法429条は、第三者保護のための特別の法定責任を定めたもの。

2:本状の責任と不法行為責任との競合を認める。

3:量損害包含説をとる。

4:悪意・重過失は、会社に対する任務懈怠について必要。

 

不法行為責任説(少数説・松田二郎)

1:会社法429条は、民法709条の責任を取締役について軽減するための特則である。

2:会社法429条の責任の性質も不法行為責任であるため競合は認められない。

3:直接損害に限られる。

4:悪意・重過失は、第三者に対して直接加害行為を行った取締役に関するもの。

 

注意点

a:取締役が悪意または重大な過失により善管注意義務(会社法330条民法644条)および忠実義務(会社法355条)に違反し、これによって第三者に損害を被らせたときは、取締役の任務懈怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係があるかぎり、会社がこれによって損害を被った結果、ひいいては第三者に損害を生じた場合であると、直接第三者が損害を被った場合であるとを問うことなく、当該取締役が直接に第三者に対し損害賠償の責に任ずべき。

 

・「取締役と第三者との間の損害に相当の因果関係があるかぎり」とあり、因果関係がない場合は、認められない。

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