問題
会社法339条2項の「正当な事由」の範囲
判例
・解任の訴え(会社法854条)の要件
- 不正の行為
- 法令定款に違反する重大な行為
・取締役に経営を行わせるにあたって障害となるべき状況が、客観的に生じた場合
学説
・取締役の経営上の失敗も「正当な事由」となる。
私見:判例を支持
株主は、取締役の選任・解任をするときに、自己の意見を会社に大きく反映することができる(会社法339条1項)。しかし、制限なく取締役を解任できれば、取締役の地位は不安定となる。取締役の地位および経済的安定性を保護するために、会社法339条2項で、「正当な事由」なき解任をするときには、損害賠償請求を取締役に認めた。
学説では経営の失敗も「正当な事由」としている。これは株主にとって解任は、経営に失敗した取締役への強力なサンクション(制裁)を与える手段と捉えているからである。
しかし、なにが経営上の失敗であるかは、短期・長期では異なる場合もある。また、どこまでが経営上の失敗であるかの判断は、個々人の主観に負うところが大きい。
経営上の失敗を「正当な事由」に含めることは法的安定性を損なうことになる。
また、経営の失敗を「正当な事由」に含め、株主の主観にすべてゆだねてしまえば、「正当な事由」を適用されることはほとんどなくなってしまう。この結果、会社法339条2項の(存在)意義は失われてしまう。
以上の点から、「正当な事由」に経営上の失敗を含めるべきではない。法的安定性を確保し、会社法339条2項の意義から判例の見解を支持する。
取締役の解任の根拠条文(会社法339条各項)
会社法339条1項
役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
会社法339条2項
前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求できる。