総会決議を欠く新株発行の効力(百選26)

7 2月

問題

総会決議を欠く新株発行は有効か否か?

 

・判例・通説:有効

・私見   :無効

 

判例・通説(有効説)

 新株発行は会社の業務執行に準ずるものであり、株主総会の特別決議の要件も取締役会の権限行使についての内部的要件に過ぎないから、取締役会決議に基づき代表取締役が新株を発行した以上、新株の取得者や会社債権者の保護など外部取引の安全に重点を置くべきであって、仮に新株発行につき株主総会の特別決議を欠いていたとしても、これをもって新株発行を無効とするものではない。

 

少数説(無効説)

 新株発行は、一般の営業取引と異なり会社の機構上の問題であって、その慎重な手続きを単なる内部的要件とみることができないのは合併などと同様である。

 有効説の論理を押し進めると、通常の新株発行の権限はもちろんのこととして、有利発行の権限までも代表取締役にあるという結論を認めてしまうことになりかねない。

 

折衷案

 当初の引受人のところに新株がとどまっているなど取引の安全を考慮する必要のない場合には、無効としても差し支えない。

 

私見

 有効説は、新株発行を取引行為の面からとらえ、無効説は会社運営の面からとらえている。つまり、新株発行の論点は、株主の利益と取引の安全との間の利益衡量の問題である。

 新株の発行により株式が希薄化する。株主の固有権(会社法第105条1項各号)にかかわる重要事項であるために、原則として株主総会の特別決議を必要とする。また機関権限分配の法理から考えても無効説が妥当であると考える。

 

 有効説の論拠として、取引の安全をあげている。しかし、新株発行が無効になったとしても、元の資本状態に戻るだけであり、債権者にとって不利益を被るとはいえない。

 また折衷案では、新株発行の場所により判断している。しかし、新株の場所により判断が分かれれば、結果として株主が不安定な状態に置かれることになる。そして、新株の場所の判定は相当の困難が考えられ、折衷案は株主の負担が大きいことから妥当ではないと考えられる。

 

 以上より、新株発行法制の趣旨からも新株発行行為は会社機構上の問題であり、無効説が妥当であると考える。


・新株発行法制

 原則:株主総会特別決議(会社法第199条2項、第309条2項5号)

 例外:公開会社では、取締役会決議(会社法第201条1項)(有利発行の場合は株主総会特別決議 会社法第201条1項 第199条3項)

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